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事業のご紹介

ご挨拶

教授 荒木栄一

熊本大学大学院生命科学研究部 代謝内科学分野

教授 荒木栄一


 去る平成28年4月14日の前震ならびに4月16日未明を本震とする熊本地震により、熊本県には甚大な被害がもたらされました。災害でお亡くなりになられた皆様のご冥福を心からお祈り致します。また、被災された多くの皆様には謹んでお見舞い申し上げます。各方面からのご支援により、ようやく復興の兆しが見えているとはいえ、被災地における医療不足や健康不安は未だに解消しきれていないのが現状です。熊本大学医学部附属病院 糖尿病・代謝・内分泌内科におきましても、熊本糖尿病支援チーム(Kumamoto Diabetes Assistance Team: K-DAT)の結成および被災地への派遣、糖尿病患者様からの相談窓口(Eメール、ホットライン)の開設、被災地への外来診療支援など、積極的に患者様の支援に取り組んでまいりました。1日も早い復興と、被災された皆様に笑顔が戻りますことを、心からお祈り申し上げます。

 さて、平成24年 国民健康・栄養調査結果によると、本邦において糖尿病が強く疑われる人は過去最多の約950万人にのぼります。熊本県においては、平成23年度 県民健康・栄養調査によると40~74歳の糖尿病有病者の推計数は7万3千人、予備軍の推計数は10万5千人となっており、熊本県民の40~74歳の約4人に1人が糖尿病予備軍または有病者という状況です。また、平成22年度 特定健康診査結果によると、熊本県民の空腹時血糖およびHbA1cは全世代で全国平均値を上回り、特に40~44歳においては、空腹時血糖値は全国平均の約120%、HbA1cは全国平均の約130%と若い世代から血糖値が高いことを示しており、将来の糖尿病患者数増加が危惧される状況です。さらには、透析導入の主要原疾患の割合は糖尿病腎症が最も多いのですが、人口対比の透析患者数については熊本県が全国平均を大きく上回り、平成25年末は全国2位です。糖尿病やその合併症である糖尿病網膜症、腎症、神経障害、心筋梗塞、脳血管障害は、患者様の生活の質を大きく損なうのみならず、医療経済の上からも大きな問題となっています。

 このような現状から、熊本県において平成17年に「熊本県糖尿病対策推進会議」が設置され、様々な糖尿病対策を進めてまいりました。また、糖尿病の発症予防と重症化阻止、糖尿病合併症の発症・進展阻止を達成するため、多機関・多職種の連携による切れ目のない保健医療サービスを県民に提供できるような体制の整備をするべく、平成21年度から「熊本県糖尿病予防総合対策事業」を開始しました。具体的には、「保健」と「医療」、「かかりつけ医」と「糖尿病専門医」、「医師」と「コメディカル」との連携を促進しています。このような取り組みにより、健診で異常が指摘された住民が適切な医療機関を受診することが可能となり、重症化してしまった糖尿病患者や管理の難しい糖尿病患者を「かかりつけ医」と「糖尿病専門医」の両者で診療する医療連携が促進されるのです。このような糖尿病診療体制の強化・充実に必要となる熊本県内の糖尿病医療スタッフの数的・質的充実を目指して、平成22年には「熊本県糖尿病医療スタッフ養成支援事業」を開始し、日本糖尿病学会が認定する「糖尿病専門医」や日本糖尿病療養指導士認定機構が認定する「日本糖尿病療養指導士(CDEJ)」の養成を支援してまいりました。その一方で、糖尿病専門医やCDEJは熊本市に集中しており二次医療圏域には少ない、多職種・多機関の連携は未だに十分であるとは言えないといった課題が浮き彫りにされてきました。

 このような状況を踏まえ、前身にあたる「糖尿病医療スタッフ養成支援事業」のステップアップとして「糖尿病医療の均てん化・ネットワーク支援事業」(以下、本事業と省略します)を平成28年から開始することになりました。本事業は、二次医療圏域における糖尿病対策の体制成熟と糖尿病医療スタッフの育成・確保、多職種・多機関の連携の推進を目指します。また、CDEJ取得条件には職種や経済的な制約も多く大幅な増員は期待できないといった問題から、取得条件が緩和された「熊本地域糖尿病療養指導士(CDE-Kumamoto)」制度が平成27年に発足しましたが、本事業はCDE-Kumamotoの養成を支援します。本事業の取り組みの1つとして、前身のホームページ『熊本県糖尿病医療スタッフ養成支援事業』から、新しく『熊本県糖尿病医療の均てん化・ネットワーク支援事業』へと改訂いたしました。

 本ホームページでは、糖尿病について学習しようと考えている医療関係者・研究者・医療保険者・市町村の保健衛生行政担当者・学生の方々に、熊本県内で開催される研究会・勉強会を検索し、学習の質と量を確保して頂くため、『県内の糖尿病関連研究会』のページを作成しました。また、糖尿病専門医やCDEJ、CDE-Kumamotoの養成を支援するための『受験者向け情報』のページ、さらに『市町村の実施事業』を紹介するページを設け、糖尿病医療スタッフが生活習慣改善指導を必要とする住民に当該地域で利用可能な保健サービス(栄養指導や運動療法教室など)を紹介できるようにしました。その他、『糖尿病の啓発活動』、『糖尿病関連の学会』、糖尿病診療の必要書式(専門医宛紹介状、および逆紹介状の書式)や糖尿病啓発用チラシを手軽に入手するための『ダウンロード』のページを設けて、熊本県で推進されている糖尿病診療体制に即した糖尿病診療を学習・実践できるよう配慮いたしました。

 糖尿病の発症予防・重症化阻止・合併症進展阻止のために必要な医療スタッフの連携、切れ目のない保健医療サービス、上質な糖尿病診療の提供、住民および患者の教育を実践する際に、このホームページをご利用頂ければ幸いに存じます。また、このホームページが、糖尿病医療スタッフの皆様や糖尿病専門医やCDEJ、CDE-Kumamotoをめざす皆様にとって、糖尿病の学習や保健医療連携の一つのツールとして機能するよう、ご活用をお願い申し上げます。