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ブルーサークルメニュー

和水町立病院とシェ・ホンダの取り組み

和水町立病院における「レストランが作成する美味しい糖尿病食」
―低エネルギーフレンチフルコースの開発および食事会開催について―

和水町立病院  中島桂子 釘﨑美有紀 平島公平

和水町立病院では毎年1回糖尿病教室の一環として、平成20年より地元和水町に店を構える欧風料理店“シェ・ホンダ”様御協力のもと【低エネルギーフレンチフルコースの食事会】を開催しています。

糖尿病の食事療法には「好きな物を食べられない」「少ししか食べられない」などマイナスなイメージを持たれている方が多いのが現状です。特に外食に関しては、(これは食べても大丈夫?)と考えながら食べる為、「食事を楽しむ事が出来ない」といった声も聞かれます。

そこで、糖尿病の患者様でも、食事のエネルギーや塩分を気にせずに安心して外食を楽しむ事が出来ないかと考え、当院で行っている糖尿病教室の一環で、外食の食事会を開催してみようという事になりました。

幸い和水町には「美味しい」と評判の欧風料理店“シェ・ホンダ”があります。オーナーの本田収氏は地元和水町出身で、京都の都ホテルや熊本ホテルキャッスルなどを経て、2007年に欧風料理店“シェ・ホンダ”をオープンされました。熊本県産の新鮮な食材を中心に、和水町の賑わいと発展を願いながら日々奮闘されています。

本田シェフ シェ・ホンダ
本田シェフ シェ・ホンダ

そこで、外食のなかでもエネルギーが高いと敬遠されやすい、フレンチフルコースにチャレンジしてみてようということになりました。本田シェフに趣旨を説明し、御協力をお願いしたところ快く引き受けていただき、おかげさまで平成20年から毎年1回開催する事が出来ています。

第1回目は全てが初めての試みでしたので、メニュー作成に関しても、食材の種類や量・調味料の量などの調整が難しく、栄養価の調整の為に本田シェフと何度も打ち合わせを行いました。

フランス料理は、オリーブオイルや生クリーム、バターなどを多く使用するのが特徴ですが、それらをほとんど使用せずに美味しく仕上げる事はとても難しく、本田シェフも大変御苦労されたと思います。

この低エネルギーのフレンチフルコースの食事会も、回を重ねるにつれ、徐々に内容の濃いものになってきました。例えば、初めは食後のみの血糖測定しか行っていませんでしたが、2回目以降は食前にも血糖・血圧測定を行い、血糖値の変動がどういった理由によるものかなどの検討も行っています。

血糖・血圧測定
血糖・血圧測定

本田シェフとの打ち合わせの際も「このメニュー、本当はジャガ芋を使いたいけどエネルギーが上がるから今回は使わないね」などと、本田シェフも本当に色々と考えてメニューを作っていただいています。
料理の内容も、毎年違った食材を使用され、調理法も重ならないように考慮されています。
そのため今まで同じメニューは一度もなく、毎年参加されている方は「今年はどんな料理かな?」と大変楽しみにされています。

また平成24年は、食材に変化をもたせたい為、開催時期を7月から11月に変更しました。

食事会開催までの流れですが、食事会の約2ヶ月程前に“シェ・ホンダ”に予約をします。参加者はスタッフを含め、25~35名程となり、血糖・血圧測定用の個室や、インスリン注射・体調不良を訴えられた際に対応出来る個室なども準備して頂く為、お店のご好意により貸切りにしていただいています。

開催の10日程前に、1回目の打ち合わせを“シェ・ホンダ”にて行います。
その際に本田シェフよりメニュー説明を受けるのですが、1つ1つの調理法や出来上がりイメージ、使用する全ての食材の使用量を確認しながら進めていく為、2時間近くかかります。

使用食材に関しては、より正確なグラム数を把握する為に、一つ一つをこと細かくお尋ねします。(この食材を使用したら、栄養価がオーバーしそうだな・・・)と思った食材については、「他の食材への変更は出来ませんか?」とお願いする事もあります。

また、本田シェフの方から「栄養計算してみて、まだ大丈夫そうならここにオイルを少しでも入れたい」と言われた箇所などは、全てをメモしておきます。 それらを栄養科に持ち帰り、栄養計算を行います。

栄養価が超過あるいは不足している場合は、「この食材は半分にしてもらえないか」「ここにオイルを入れられるかもしれない」など、2回目の打ち合わせ時に変更・検討する点を、あげておきます。

オイルの追加の場合、数箇所に追加の要望がある事が多いので、「オイルであれば、あと何グラム追加が可能か」「生クリームになると、あと何グラム追加が出来るか」など細かい所まで検討し、打ち合わせの際に様々なパターンで対応出来るようにしておきます。

2回目の最終打ち合わせは、開催の3日前に行います。栄養計算の結果をお伝えし、足せる食材、引いて頂きたい食材を相談しながら、前菜から再度細かく検討していきます。

ある程度は食材の把握をした後なので、その打ち合わせの場で、栄養計算もしながら最終決定をしていきます。

最終決定をしたメニューは、栄養科で再度栄養計算の訂正を行い、当日にお配りするメニュー表の作成を行います。

《昨年のメニュー》

タスマニア産サーモンのミ・キュイ、トロピカル風 カニと細切り野菜のスープ、サフラン風味
タスマニア産サーモンのミ・キュイ、
トロピカル風
カニと細切り野菜のスープ、サフラン風味
魚介類のキャベツ包み蒸し、雲丹ソース添え 豚フィレ肉のフォレティスエ風、とうもろこしライス添え
魚介類のキャベツ包み蒸し、雲丹ソース添え 豚フィレ肉のフォレティスエ風、
とうもろこしライス添え
冷製カッペリーネ(イタリア細麺)と夏野菜のトマト風味サラダ 桃のコンポートとソルベ
冷製カッペリーネ(イタリア細麺)と
夏野菜のトマト風味サラダ
桃のコンポートとソルベ
ミルクティー
ミルクティー

エネルギー 564kcal 塩分 3.1g

《食事会当日の流れ》

11:30~ 血圧・血糖測定
開会(栄養科)
医師・総師長よりあいさつ
本田シェフよりメニュー説明
12:00~  食事会開始
意見交換・質疑応答
14:00~ 血圧・血糖測定
アンケート回収
閉会・解散

食事会当日は、参加者の車の誘導や受付までの案内などを行う為、10時50分に“シェ・ホンダ”に当院スタッフが集合し、各自担当するところの受付準備を行います。
参加者の受付は、11時30分からとなっているのですが、早い方は11時にはいらっしゃるので、来られた順より血圧・血糖の測定を行います。
テーブルには、参加者の間にスタッフが入るように心がけていますが、夫婦での参加や、友人同士の参加もありますので、お好きな席に座っていただくようにしています。

本田シェフからのメニュー説明では、メニューの説明だけではなく、材料の選び方、調理の工夫等に加え、毎回テーブルマナーのお話もしてくださるのでそれも楽しみの一つです。

12時から食事が始まり、食事終了までは約2時間ほどありますので、日頃なかなか話せない事や、聞けない事など、参加者とスタッフのコミュニケーションがとれる機会にもなっています。
様々な職種のスタッフが参加していますので、疑問や質問にも素早く対応出来るようになっています。

ゆっくりとした時間の中で、一品一品を味わいながら食事をする事で、よく噛んで食べる事が出来ますし、フレンチフルコースでも安心して全て食べられる事は、参加者の方々にもとても好評です。

参加者の食事風景

参加者の意見として・・・

  • 美味しかった。相談すれば、こういうレストランでの食事も出来るのだという希望が持てた。
  • ゆっくりとした中で食べたので、一品一品に意味があるような気がした。
  • 糖尿病であっても「美味しいものを食べたい」という考えに変わってきているように感じた。
  • みんなで食事が楽しむ事が出来る。
  • 調理の参考にもなる。
  • 低エネルギーフレンチフルコースに参加でき、有意義な時間が過ごせた。
  • ボリュームがあって美味しかった。
  • 毎年違うメニュー、食材でされていてすごいと思う。
  • ゆっくり食べる事の大切さがわかった。

糖尿病教室への参加が難しかった方の中に、開催当日の夜に“シェ・ホンダ”様に「昼に行われた糖尿病教室で出されたのと同じメニューを出して欲しい」と希望された方もいらっしゃったと聞き、とても嬉しく思いました。

“シェ・ホンダ”様では、希望されたお客様には、いつでも低エネルギーのコースを提供していだだけるとの事です。

今後もこの【低エネルギーフレンチフルコースの食事会】を糖尿病教室として開催していこうと考えています。開催時期も、昨年までは7月頃に実施していましたが、“シェ・ホンダ”様とも相談し、今年は11月の開催を予定しています。

毎年前回の反省点を改善し、参加者の方々により満足して頂けるよう、スタッフ全員で協力し合い頑張っています。