ご挨拶

熊本大学大学院生命科学研究部 代謝内科学分野

教授 窪田 直人

 最新の特定健診の結果によると、熊本県は全国と比べて耐糖能異常を有する者の割合が極めて高く、メタボリックシンドローム該当者・予備軍も増加し全国上位となっています。糖尿病性腎症をはじめとする合併症の発症がさらに進行することが懸念され、第8次熊本県保健医療計画においても糖尿病対策は重要施策に位置付けられています。糖尿病対策には多職種の連携によるチーム医療が必要であり、糖尿病医療に精通した医療スタッフの育成や保健医療連携の強化が全圏域において不可欠です。

 熊本県では、平成17年に「熊本県糖尿病対策推進会議」を設置し、様々な糖尿病対策を進めてきました。平成19年には、地域の糖尿病診療の窓口となるかかりつけ医師の養成を目的に「糖尿病連携医」(以下、連携医と省略します。)を設定しました。平成21年度からは、発症予防や重症化防止、合併症の進展予防を目的に、多機関・多職種が連携した切れ目のない保健医療サービス体制を整備する「熊本県糖尿病予防総合対策事業」を開始し、「保健」と「医療」、「かかりつけ医(連携医)」と「専門医」、「医師」と「コメディカル」の連携を推進しています。この取り組みにより、健診で異常を指摘された住民が適切な医療機関を受診し、重症化した患者も「かかりつけ医(連携医)」と「専門医」の協力によって診療される連携が進展しました。また、平成22年からは、県内の医療スタッフの量的・質的充実を図るため、「熊本県糖尿病医療スタッフ養成支援事業」を開始し、「糖尿病専門医」や「CDEJ」の養成を支援してきました。

 一方で、専門医やCDEJが熊本市に集中し、他の地域では不足しているほか、連携体制も十分とは言えない現状があります。そこで平成28年度からは「糖尿病医療の均てん化・ネットワーク支援事業」として、多職種の関係構築や相談支援、地域住民への啓発活動を通じ、連携体制の強化を図っています。将来的な生産年齢人口の減少や高齢者糖尿病の増加に伴い、重度の要介護者の医療ニーズも拡大する中、より高度な専門性と幅広い知識を持つ人材の育成と確保が求められています。これらの人材を有効に活かすためにも、多職種連携体制のさらなる充実、地域住民への啓発、健診の重要性の周知、最新医療情報の提供などが一層重要となっています。

 このような現状を踏まえ、前身にあたる「糖尿病発症・重症化予防対策支援事業」をステップアップし、令和6年より「糖尿病重症化予防重点支援事業」(以下、本事業と省略します)を開始することになりました。本事業では、

①医療人材の確保・育成
②保健医療連携促進

を軸とした活動を通じて、新型コロナウィルス感染症の流行に伴い実施が困難となっていた事業の再開や見直しを行うとともに、医療スタッフのスキルアップ支援のために取り組みを行い、糖尿病医療に精通した医療スタッフの育成や保健医療連携の強化により熊本県全域における糖尿病対策の推進を目的としています。

 本ホームページでは、二次医療圏毎に多職種参加型で開催している『糖尿病ネットワーク研究会』の情報を発信します。また、糖尿病関連の学会や連携医・CDEJ・CDE-Kumamotoなどの『リンク集』、関連するガイドラインや啓発用チラシを入手できる『お役立ち情報』ページを設け、熊本県の診療体制に即した糖尿病診療の学習・実践を支援しています。

 また、『市町村の実施事業』を紹介するページを設け、医療スタッフが地域で利用可能な保健サービス(栄養指導、運動療法教室など)を住民に紹介できるようにしています。

 糖尿病の発症予防・重症化阻止・合併症進展予防に必要な医療スタッフの連携、切れ目のない保健医療サービス、質の高い診療提供や住民教育の実践に、本ホームページをご活用いただければ幸いです。糖尿病医療スタッフや専門医・連携医・CDEJ・CDE-Kumamotoを目指す皆様の学習・連携ツールとして役立つことを願っております。